浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



森下・やきとん・山利喜 その2

dancyotei2017-07-02



引き続き、森下の[山利喜]。



なにを頼もうか、考えていると、


最初に頼んだレモンサワーがきた。



さて。


頼むのは、、、


「煮込み玉子付きに、ガーリックトースト」。
ここではこれを頼まなければ、きた意味がない。


それから、と。


まぐろぬた。


うまそうである。


焼きとんは、、、


レバは決まりで、なんこつ。
ここは各二本ずつがきまり。塩で。


お通しは、ちょっと見えずらいかもしれぬが、
小鯵をさらに一口に切った南蛮漬け。


こんなものも、うまい。


なにがというと、まず火の通り方。
骨までしっかり柔らかく、それでいて、カリッとし
よい食感。そして、味付けもちょうどよい塩梅。


こういうちょいとしたお通しにも細かく
気が配られているのが、ここをただの焼きとん
大衆酒場に留まらせていない所以であろう。


目の前の煮込みの大鍋。



ぐつぐつと煮えている。


モツの多くは、いわゆるマルチョウではなかろうか。
私はこれは、脂がたっぷり出るのがポイントとみている。


右側、鍋の持ち手に紐のようなもの結び付けられている
のがおわかりになろうか。


これ、いわゆるブーケガルニだと思われる。
ローリエなどのハーブ類が入っていたと思われる。


ここのご主人はフレンチの修行をされた方で
このつゆにはポートワインなども入っている。


ぬたがきた。



ぬた、というのは好物の一つである。
自分でもよく作る。


ここでぬたを食べるのは初めてではなかろうか。
注目すべきは、赤い味噌の色。


商売人の作るぬたの多くは、白味噌を使った
からし酢味噌である。


ひょっとするとこの赤い色は、江戸味噌、では
なかろうか。


味は甘めでからしも入っているか。


江戸味噌というのは今はごくわずかしか
作られていない東京伝統の味噌。


浅草の[万久]というところで手に入る。


いわゆる白味噌と赤い八丁味噌の中間のような味噌で
甘いが独特のこくがある。
駒形[どぜう]ではどぜうの下味付けに使われている。


まあ、わからぬが。
まぐろもうまい。
しっかりした食感の中トロ。よいものではなかろうか。


そして、真打の登場。



焼きとんやで煮込みというのは、どこにでもあって、
前座的なポジションかもしれぬが、ここのものは
間違いなくトリを取るものであろう。


目の前なので盛り付けも見ていた。
素焼の平たい器をガスで熱し、そこに煮えたモツをのせ、
玉子、そしてつゆをまわしかけ、ねぎをのせる。
それで、ずっと熱いままで食べられる。


先に書いたように、独自のレシピで濃厚なつゆと脂。
そのつゆを十分に吸った、ゆで玉子。


そして、このつゆをガーリックトースト
つけて食べる。


フランスパンでバジルとにんにくの
オリーブオイルでカリッと焼かれている。
このにんにくとバジルの塩梅も絶妙。


この完成度の高さ。
やはり、それぞれのものにかなり細かく
神経が使われていると思うのである。


間違いなく、押しも押されぬ大衆酒場・森下[山利喜]の
大看板。
メインディッシュ、スペシャリテである。


焼きとんもきた。



レバとなんこつ。


溶きがらしが添えられている。
これもここの特徴である。
意外に他では見ないのではなかろうか。


そこそこ辛めだが、辛すぎない。
これもよい。


うまかった。


レモンサワー二杯。


ご馳走様でした。


勘定をして、出る。


ここの開業は関東大震災後の大正14年
なんと創業92年。
現ご主人は三代目だが、三代目になってからも
すでに30年以上にはなるのであろう。


フレンチ仕込みの煮込みの味もこなれ、
深川大衆酒場の味になっている。
それがここの底力。
そして、多くの料理に細やかに神経が行き届いている。
やはり居酒屋としては別格であろう。






山利喜