浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



煮物二種 里芋とねぎ、ごぼうと豚肉

4月8日(土)

さて。

土曜日。

野菜煮物を食べようと思い立つ。
肉ばかり食べていてはいけない。

いつものハナマサではなく隣りのライフへ。

安くなっている、こぼう、
それから、里芋。

里芋といえば池波レシピ、ねぎと煮たもの。

ごぼうは、池波レシピだと、あの軍鶏鍋に使う。
軍鶏鍋、と、いうのは、鶏のももだったり
胸だったり、いわゆる正肉も入れるが、
脂の多い皮やレバーが入るのがポイント。

そうである。
つまり、ごぼうは、脂との相性がとてもよい。

鶏のレバーや皮と煮てもよいが
豚もよい。

豚肉とごぼうを煮たものは好きで
学生の頃から作っていた。

ごぼうは泥つきと、洗ったものとあるが
面倒なので洗ったもの。

里芋とごぼうに加えて、ねぎと豚コマを購入。

帰宅。

まず、簡単なごほうから。

里芋は、泥つきなので洗わなくてはいけない。

しかし。ごぼう洗ったものがあるのに
里芋は売られていないのであろうか。
以前は八百屋に、少し前までスーパーなどにもあったと
思うのだが。

水を張った樽に里芋を入れ、木の棒を二本突っ込んで
ガラガラと動かして、泥を落とし、表面の皮ぐらいは
取っていた。
八百屋の店先ではよく見かける光景であった。

商売人でもなし、表面の皮がむけていれば
包丁でむかずにそのまま煮てもよい。

ともあれ。

洗いごぼうは、軽く表面をたわしでこすって、
斜めに切る。
笹がきよりは、多少厚く。
あくを抜くために、ボールに水を入れ、さらしておく。

里芋の方。
こちらもたわしでこする。

廉価品だけあって、小さいのだが、
その上傷んでいるところもある。

ゴシゴシと一通りきれいにするのだが、これは
なかなか荷、で、ある。
全部はきれいにしきれない。

ちゃんと包丁でむいた方がよいかもしぬれ、

ごぼうから煮てしまおう。

豚こま切れとともに、甘辛に煮る。
砂糖、しょうゆ、酒、で、ある。
気持ち、甘めに。

もうただ煮るだけ。

斜めに切ったので、すぐに煮える。

煮えた。



とりあえず、これで呑み始める。

コツも何もない。
ただ甘辛く煮ただけであるが、うまいもんである。

以前あくが出て、イマイチのこともあったが、
30分程度水にさらしておけば、OKか。

結局、里芋はくじけて、洗って水に浸したまま。

翌日、内儀(かみ)さんにむいてもらう。

こちらは砂糖はなし。
酒としょうゆのみ。

芋が柔らかくなったら、五分(1.5cm)に切ったねぎを
入れて、ねぎ火が通れば完成。

盛り付け。



里芋はそれだけで煮ても、いわゆる煮っ転がし、
むろんうまいのだが、ねぎを一緒に入れるだけで、また、
趣が変わる。

多少、酒の肴として、ちょいと位が上になるか。

池波レシピとして登場するのは鬼平


新装版 鬼平犯科帳 (11) (文春文庫)

(文春文庫) 池波 正太郎著

「土蜘蛛の金五郎」という一編である。

冒頭部分、三ノ輪の一膳飯屋[どんぶり屋]というところで

『熱い飯に味噌汁。里芋と葱のふくめ煮と、大根の切漬がついている。』

という簡単な定食。
この味に、平蔵はかなり感心をする。

これで七文。そばやの屋台が十六文であったことを考えると、
格安である。

まあこれには“なにか、ある”わけである。

三ノ輪という場所もよい。
江戸郊外。本道ではないが、奥州日光街道の沿道。
舞台設定とすれば、絶好の場所。

ともあれ。

この里芋とねぎもまた、酒にも、飯にも、抜群にうまい。