浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



初芝居・歌舞伎座・寿初春大歌舞伎 その1

dancyotei2017-01-05



1月3日(水)



正月三日。



毎年恒例の、初芝居。
歌舞伎見物、で、ある。


この正月は東京では歌舞伎座、浅草、新橋、
そして、国立の四劇場。


浅草は尾上松也などのまあ、花形。
新橋は、市川右近の右團次襲名披露。
市川右近猿之助一門、澤瀉屋(おもだかや)。
スーパー歌舞伎系の人といえばわかりやすいか。
(ただ右團次というのは高嶋屋になるそう。)


国立は通し狂言「しらぬい譚」。
お馴染みの菊五郎一座だが国立らしく、
正月なのに、黙阿弥作品なのになんだかマニアックな芝居。


となると、消去法になってしまって、
歌舞伎座に決めた。


二日が初日で三日の夜の切符を取った。


順番が逆になってしまったが、なにを演っているのか。


歌舞伎座は昼夜ともに、通しではなく
人気芝居のいいところだけを演る例のパターン。
(これ、見取狂言というよう。)


毎度書いているが、往々にして超有名な芝居の
超有名な幕だけを並べられても、作品全体がわからず
私のような歌舞伎初心者にはまあ、はっきりいって
ほぼ意味はない。
できれば避けたいのだが、今回は仕方ない。


演目を細かく見ても、いずれも初見。
出ている役者を見ると、吉右衛門幸四郎玉三郎愛之助、、。


玉三郎は夜だけ。
このところ、気に入っている、玉三郎
夜。


まあ、こんな決め方、で、ある。


旧臘(きゅうろう)買った、青竹色の
お召風紬を着て、3時頃出かける。


天気もよくて、温かい。
トンビのコートを着てきたのだが、
歩いて稲荷町の駅までくるとポカポカするくらい。
今年の正月は、温かくてよい正月であった。


銀座三越で、ちょっと買い物。
いつも忘れてしまうので、白足袋を二足。
地下で弁当。
[弁松]が休みなのでテキトウな大阪寿司に。





演目と配役を書き写しておく。



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夜の部



北條秀司 作・演出


一、井伊大老(いいたいろう)



井伊直弼 幸四郎


仙英禅師 歌六


長野主膳 染五郎


水無部六臣 愛之助


老女雲の井 吉弥


宇津木六之丞 錦吾


中泉右京 高麗蔵


昌子の方 雀右衛門


お静の方 玉三郎



   五世中村富十郎七回忌追善狂言


二、上 越後獅子(えちごじし)


角兵衛獅子 鷹之資



  下 傾城(けいせい)


傾城 玉三郎



三、秀山十種の内 松浦の太鼓(まつうらのたいこ)



松浦鎮信 染五郎


大高源吾 愛之助


お縫 壱太郎


宝井其角 左團次



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今年、2017年は大政奉還150周年だそうな。


それで、昼に慶喜を描いた「将軍江戸を去る」
という芝居があって、夜に「井伊直弼」という
つながりのようである。


どうでもよいが、大政奉還150年は明治150年かと思うと
大政奉還から明治の改元まで半年ほどあって、明治から
150年は来年のようである。


一つ目、「井伊大老」。


この芝居、まったく知らなかった。


初演は昭和31年。
当時の新作ということか。


幕は、いつもの縦縞の定式幕の引幕(ひきまく)ではなく
上にあがる、緞帳がおりている。


歌舞伎ではない、ということなのか。
なん回も書いているが、歌舞伎というのは
江戸の頃はお上に許された江戸三座のみが許されており、
それ以外は、小屋掛けのいわばモグリの芝居で、
歌舞伎の横に引いてあける引幕は使えず、上にあげる
緞帳を使っていたのである。


これ、現代的にも定義があるのであろう。


ともあれ。
北條秀司という人の作。
不勉強ながらこの方は知らなかった。


元々は池波先生と同じ新国劇の脚本を書かれていたよう。
戦後の演劇界で、天皇とよばれるほどの大立者だった人。
代表作は新国劇の「王将」だそう。
(大阪の将棋指し坂田三吉の「王将」は映画で知っているが、
元は新国劇であったというのも知らなかった。
知らないことばかり、、。)


大政奉還150年はよいのだが、なぜ「井伊大老」なのか。
それも今!?。


井伊大老松本幸四郎高麗屋
幸四郎は来年、白鸚を襲名するとのことが旧臘発表されている。
白鸚は、鬼平も演った幸四郎吉右衛門の父。
先代幸四郎ということでもある。
まあ、白鸚というのは隠居名前といってよいと思われるので
息子の染五郎幸四郎を襲名させるということが眼目であろう。


「井伊大老」はその白鸚のなん度も演じた芝居で
当代幸四郎吉右衛門もなん回か演っているよう。


さて、どんな芝居か。





つづく