10月31日(月)夜
五反田のオフィスからの帰り道。
昨日ほどではないが、寒い。
日が落ちるのが日一日と早くなっている。
寒がりの私は、スーツも冬物にしその上に、
ステンカラーのコートを引っ掛けてきてしまった。
さて、なにを食べようか。
やっぱり、温かいもの。
煮物。
汁物か。
そうだ、鴨汁。
蕎麦やの鴨せいろの汁のみ。
これで呑む。
よいものである。
蕎麦やへ寄って、とも思ったのだが、作ろうか、と
考えた。
いつものハナマサに寄る。
冷凍の鴨肉。
それから三つ葉も必須であろう。
ねぎはある。
油揚げも入れよう。
ちょっと具だくさん。
食べるかどうかは置いておいて、
生蕎麦も買っておこう。1パック。
帰宅。
鴨肉は袋ごと流水に漬けて解凍しておく。
以前にもなん回か作っているが、うまいものを作ろうとすると、
意外にこれが難しい。
蕎麦やで食べても、店によってかなり優劣がある。
鴨の脂と旨みをつゆに引き出せているか。
このことである。
むろん、ただ肉を切ってつゆで煮込んだだけでは
まるで落第である。
鴨肉は、火を通しすぎないレアが鉄則。
すぐに縮んで堅くなってしまう。
それで、肉は煮込まずに別に火を通し、後から入れる。
脂の方は脂身を細かく切ったものからよく脂を出す。
旨みの方。
これは、プロがよくやるのは、鴨肉でつくねのような団子を
作って入れる。
ただ、これはわずかな鴨肉で一人分だけ作るのは
あまり効率的ではない。
大量に作った余りの肉を叩いて団子にする。
まあ、よいか。
脂だけだ。
脂身を切り出し細かく切っておく。
脂を取った肉はちょっと厚めのスライス。
ねぎ。
これは煮込み用と薬味用の2種類。
煮込み用は5cmほどの長さに切り、
さらに縦に1/4に割っておく。
薬味用は薄いこぐち切り。
三つ葉は一把、洗って、ザクザク切る。
油揚げは一枚の半分ほどを短冊切り。
そして、酒。
さすがにビールではなく、燗酒、で、あろう。
鉄瓶に水を入れて火にかけておく。
これで準備完了。
先に鍋で脂を出す。
脂が出てきたら脂を取った肉も足す。
今日は鍋一つで完結させてしまおうという方針。
しかし、本当は、別に、
魚焼用のグリルなどで焼くのがよいのであろう。
たが、これもちょいと難しい。
大きなまま表面を焼いて、中はレア。
つまりたたき状にしてからスライスし、
最後に入れる。
これがよさそうだが、やはり一人分では無理である。
ともあれ。
脂と共に肉も鍋にいれ軽く焼いて、取り出す。
ここに桃屋のつゆ、水、縦に切ったねぎ
短冊に切った油揚げを入れる。
ねぎに火が入るまで。
いいかな。
別にしておいた、肉も入れる。
OK。
丼に入れて、三つ葉もたっぷり。
出来が上がり。
酒。
一合のお銚子に酒を入れて熱くなった鉄瓶で燗をつける。
銘柄はもちろん、菊正宗。
脂も十分に出ている。
肉の旨みも、量を入れたせいか意外に出ている。
やはりこれ、鴨せいろそばのつけ汁、というだけでなく、
もはや独立して、一品の肴でよいのではなかろうか。
特に鴨肉をたっぷり入れると。
濃いめのしょうゆ味と鴨肉、鴨の脂がまた相性のよいこと、
夥(おびただ)しい。
そして、もちろん、辛口の菊正宗もなくてはならない。