浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



南千住・うなぎ・尾花

dancyotei2015-11-12

11月8日(日)夜

ちょっと久しぶりであろうか。

[尾花]に行きたくなった。

[尾花]というのは、南千住のうなぎや、で、ある。

そして、私が最も好きなうなぎやの一つである。

東京で三軒挙げろといわれれば南千住[尾花]、明神下[神田川]、
そして麻布[野田岩]。

味も店もひっくるめてこれがベスト3である。

今日は一日、しょぼしょぼした雨。

ここは予約ができないが様子を聞くために、
6時頃、内儀(かみ)さんがTELを入れる。
並んではいないとのこと。
この時期で、おまけに雨で、少ないのかもしれぬ。

よし、出掛けよう。

セーターを着込んで、出る。

面倒なので、タクシー。

蔵前(江戸)通りから言問橋西詰めの交差点から斜め左に入って
真っ直ぐである。
このルートは、その昔の江戸から奥州へ向かう、
奥州街道の本道であった道。

泪橋をすぎて、ガードをくぐり、回向院前で降りる。

左に入り、常磐線の土手下を少し行って右側。

屋根付きの門があり、玉砂利の前庭。

右側に赤い幟の立った、立派なお稲荷さん。
大木の、、これはなんであろうか、クヌギであろうか、
も立っている。

列はこの暖簾の左側にできるがなるほど、待っている人はいない。

硝子格子を開けて入る。

広い玄関。

出てきたお姐さんに二人、といって、札をもらいあがる。

広い入れ込みの座敷。
いつも思うのだが、ここはなん畳あるのだろうか。
かなり広い。
二十畳、三十畳くらいはありそうである。

お膳が奥から並び、四列、五列、、。

お姐さんに案内されて向かって右奥の窓際へ。。

座って、まずはビール。

それから、ここへきたら、ちょっと時期外れだが、
鯉のあらい、である。
それから、今日は焼鳥ももらおうか。
お重は、安い方。(4,300円也)

ビールがきた。


お通しはいつも同じだが、しその実が入った漬物。

鯉のあらいもすぐにきた。


夏のものだが、鯉のあらいは時として食べたくなるものである。
赤味噌の酢味噌。

コリッとした食感。
ちょっと甘味のある酢味噌がまた、うまい。

焼鳥もきた。


焼鳥やのものよりも、うなぎやの焼鳥は
串にびっしりと刺してある。
ふくっくらとした焼け具合で、これもうまい。

燗酒をもらう。


注文が入ってから調理を始めるので小一時間。
こうして、つまみながらゆっくり呑むのは
実によいものである。

お姐さんの先触れの、もうすぐお重がきますよ、という
声とともにお新香が運ばれ、待ちに待ったお重と肝吸い。

ふたを開けて、山椒をふる。


アップ。

毎度書いているが、これから、うまいうな重を食えるんだ、という
この世の幸せを感じる瞬間である。

蒲焼から箸をつける。

ちょっと辛め。
柔らかく、とろけるような、蒲焼。

そしてたれの染みたご飯とともに、掻っ込む

これが名にし負う千住名代[尾花]のうな重

まさに、幸せ。

今日、先に蒲焼から食べてみて気が付いたのだが、
蒲焼についているたれと、ご飯にかかっているたれは
味が違う。
蒲焼の方が、しょうゆが立った辛目。

どこのうなぎやもそうなのか、わからぬが、
ここは使い分けているのではなかろうか。

確かに、辛口好みの江戸っ子には、
蒲焼の方が辛目で、ご飯は甘めというのは、
バランスはよいかもしれない。

うまい、うまい。
夢中で掻っ込む。

食った、食った。
ご馳走様でした。

下足の札を持って、立つ。

広い座敷を横切って、玄関脇の帳場でお勘定。

格子を開けて、出る。
南千住[尾花]。やはり名店である。

 

 


03-3801-4670
荒川区南千住5丁目33−1