浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



吉例顔見世大歌舞伎・通し狂言 仮名手本忠臣蔵 その6

dancyotei2013-11-12



さて。



まだまだ「忠臣蔵」、五段目『山崎街道二つ玉の場』。



昨日は斧定九郎の芝居まで。



定九郎の芝居は、わずか五分だが「忠臣蔵」全体の中でも
大事なシーンのうちの一つであろう。


で、この後のお話はというと、定九郎が鉄砲で撃たれて、
絶命すると、花道から鉄砲を抱えた、勘平が現れる。


鉄砲を撃ったのは勘平、だったのである。


勘平は、むろん、猪を撃ったつもりだったのだが、
近寄ってみると、これが人。


「えらいことをしてしまった」と、薬でもないかと、
死体の懐を探ると、、財布に現金。


勘平は逃げ出す。


が、花道七三に掛かって、はたと、思い返し、再び
死体に戻って、その財布を取って、「飛ぶがごとくに」
花道から退場。


この場、ポイントは真っ暗闇ですべてが行われ、顔がわからない。
勘平は、自分が撃ったのは通りががりの旅人くらいに思い、
定九郎であることは知らない、ということ。


これで、五段目終了。


舞台回って、六段目『与市兵衛内勘平腹切の場』となる。


翌日、与市兵衛の家。


舞台上はおかると、母おかや。
それから、おかるがこれから身を沈めようとする、
祇園町[一文字や]の女将と世話をした女衒(ぜげん)の源六。


源六と女将は、昨日、父親の与市兵衛に五十両を渡した。
後の半金五十両を持ってきたから、おかるを
連れていくという。


母娘はまだ与市兵衛が帰ってこないのだから
わけがわからない、待ってほしいという。


押し問答。


しびれを切らした二人は無理やりおかるを駕籠に押し込み
連れて行こうと、花道にかかる。


と、ここへ勘平が帰ってくる。
花道で勘平は駕籠を押し戻し、おかるとともにうちへ入る。


ここで女衒の源六と勘平は一悶着あるが、
女将は順を追って話しをする。


そして女将は、昨日の夜、与市兵衛にこれと同じ縞の財布に
十両を渡した、と、縞の財布を見せられ、
勘平は、はた、と、思い至る。


この縞の財布は、昨夜、誤って鉄砲で撃ってしまった人の
懐にあった五十両入りの財布と同じもの。
あれは舅(しゅうと)の与市兵衛であったか、と。


むろん、これは誤解である。
観客は皆、知っている。


だが、勘平は思い込んでいる。


そして勘平は、昨夜与市兵衛に会ったと言い始める。


それで、この話は私が承知していることだから、
おかるを連れて行ってよい、と。


おかると、勘平の別れの場などあり、おかるは
二人とともに、泣く泣く駕籠で祇園町へ向かう。


そこへ、与市兵衛の亡骸が、猟師仲間によって運ばれる。


勘平は突っ伏して、与市兵衛の亡骸を見ようともしない。


母おかやは、勘平の懐の縞の財布に気が付き、勘平の様子から
勘平が思い込んでいるように、勘平が与市兵衛を殺し、
十両を奪ったと考え、責める。


そこへ、勘平の同僚の千崎弥五郎と不破数右衛門
訪ねてくる。


勘平は昨日取った五十両をその足で既にこの千崎に
渡していたのである。


二人は勘平に討ち入りの仲間入りは認められないという。
理由は不義不忠の勘平からは金はもらえぬ、むろん仲間入りもだめ、
というのが由良之助の判断だという。


これを聞くやおかやは、その金は、おかるが身を売った金で
さらに、夫与市兵衛を殺して奪った金。勘平を殺して夫の
仇を打ってくれと頼む。


これを聞いた二人は、この上なんととんでもない不義不忠の不孝者
亡き主君の恥辱にもなる、とっと帰ろうと、帰りかける。


勘平は、いや暫く待ってほしいと、涙ながらに昨夜の話を始める。


猪を撃ったはずが、人であった。
その人の懐の財布の金を、悪いこととは知りながら、
千崎に渡した。
ああこれで、仇討の仲間に入れてもらえると喜んで
うちに帰って、様子を聞くとこのありさま。


「金は女房を売った金、撃ちとめたるは、、、舅、殿、、」
と、勘平は、脇差を自らの腹へ刺す。





ここから勘平の苦しい息の下の悔恨の長ゼリフ。


二人は黙って聞いている。


終わって、千崎が気が付いて、与市兵衛の死骸の傷を改める。
すると、それは鉄砲傷ではなくて、刀傷であることが判明する。


あ〜、そうか。


二人はここへ来る途中、山崎街道で、斧定九郎が鉄砲傷で
死んでいるのを見かけ、知っている。


舅与市兵衛を討ったのは、定九郎!。


そして、勘平が鉄砲で撃ったのも、定九郎!。


二人「こりゃ勘平、早まったことを、いたしたなぁ〜〜」


で、私が最初に書いた感想「勘平ってもしかして、ばか?」
になったのであった。



皆様、これどうお思いであろうか。







六段目はまだあるのだが、長くなった。
今日はここまで。



また明日。