6月7日(金)昼
今日は家の用で休暇を取る。
朝、郊外へ出かけ、昼、池袋まで戻ってきたのだが、
ラーメンが食べたくなった。
池袋というのは最近はだいぶご無沙汰。
池袋というのもラーメンやが多かろうとちょっと調べてみる。
むろん数多くあるのだが、気になったのが、
[がんこラーメン]。
皆さんは[がんこラーメン]というのは、ご存知であろうか。
以前は[がんこ]というだけで、通じたのだが、
今は、宗家というのか、開業をした一条氏の名前を取って
[一条流がんこ]というのが一般的のよう。
私は創業時ではないが、20年以上前から、味だけではなく、存在そのものが
妙に気になって通っていた店である。
そもそもは昭和の50年代、初代の一条氏が早稲田で始めた
ラーメンやがもとで、看板なし、電話なし、窓は黒く塗りつぶし、
店の入口に牛の骨をぶら下げる、というのがトレードマーク。
私も会社に入ってからしばらくして、20年以上前、
早稲田の店を探していったのが最初であった。
その初代の掲げたラーメン哲学は
「スープは熱く、濃く(塩辛く)、麺は堅く」の三カ条。
これが[がんこ]の大きな特徴。
また、もう一つの大きな特徴はご主人の人柄。
これは一子相伝の[がんこ]ならではのものなのであろう。
基本、皆、寡黙だが、柔和。(ただし、これは個人のキャラクターに
拠るところが大きく、当てはまらないところもある。)
ただ、店には独特の緊張感があった。
“ラーメン哲学”なるものが掲げられており、
これがいやなら来なくていいよ、というメッセージがあるからだろう。
こういうメッセージを公然と掲げているラーメンやなどなかったし、
今も少ないであろう。
スープが熱い、麺が堅いは、好みの人は多かろうが、
もう一カ条の、濃い=塩辛い、で、ある。
[がんこ]の塩辛さは尋常ではなく、むろん、飲めない、
食べられないほどものではないが、東京のラーメンやの中では、
おそらく最高レベルであったろう。
これで引いた人も少なからずあったのかもしれない。
これに、先の、寡黙で柔和という雰囲気も含め、よくもわるくも、クセがあり、
好きになれれば、通いたくなる店であっのだと思う。
特に“寡黙で柔和”というのが私には強い魅力を
感じさせられたのだと振り返る。
当時、私は、葛飾の四ツ木に住んでいたこともあり、
この頃、青砥に六代目の店があり、ここには通った。
また、浅草へ引越してからは、本郷三丁目の店。
この2軒は、寡黙で柔和、という初代からの雰囲気が共通していた。
が、今ではどちらも閉店している。
実際のところ、これ以外にも、新小岩だったり、
今もあるが、末広町の店などは、なん回か行っては見たが、
“寡黙で柔和”という雰囲気がなく、継続して通うことには
ならなかった。
さて。
初めてきた池袋。
サンシャイン60通りからサンシャインへ向かってなん本目かを
右に入った右側。
お馴染みの黒い窓と牛の骨がぶら下がっている。
入口を開けてみると、満席。
ご主人が「少しまってねぇ〜」と。
ん!。これは“寡黙で柔和”な雰囲気。
外の自販機で食券を買って待つことにする。
味玉付き、というのを買う。
さすがに昼時、すぐに入れ替わりで、入る。
中はカウンターだけで、4席(?)。
狭い。そして、ご主人一人。
初代は店の中に、屋台を入れて、そこで作って出していたが
そんな狭さ。
さほど待たずに、きた。
おっと。
これは、あっさり、で、あった。
[がんこ]には、昔から、こってり、と、あっさり、が、あった。
私の場合、背脂入りの、こってり、を食べていた。
自販機にその表示があったのか、口頭でいうのか、この店のシステムが
よくわからなかったのである。
こってりでも、あっさりでも、基本のスープの味は同じであろう。
塩辛さは、気持ちおとなしいような気もするが、
懐かしい[がんこ]の味、ではある。
食べているうちにスープに溶けてくる豚バラのチャーシューも
[がんこ]のもの。
『完食、完飲するとサービス券をさしあげます。』と書いてある。
完食はむろんだが、スープも飲み干そう。
最近はあまり意識しなかったが、ラーメン好きならば、
スープを飲み干すのは礼儀でもあろう。
ご馳走様と、カウンターの上に丼を乗せ、サービス券を
もらって、店を出る。
ここの店は、関係はよくわからないが[新一条流がんこラーメン・
元祖一条流がんこ総本家客分]というのがフルネームのよう。
しかし[がんこ]ラーメンというのは不思議な店である。
東京のラーメンやは、有名になって、チェーン化するところも
少なくない。(多店舗化するが、店によって味を変えたりするのも
流行りかもしれない。)
そこまでせずとも、最低でもお客に合わせて、あるいは、
流行りに合わせて、メニューや味を変える。
いわば、マーケティングしている。
むろん商売、あたり前のことであろう。
おそらく[がんこ]は、ほぼこの、マーケティングを
していない。しているところは[がんこ]らしくない。
しないのが[がんこ]ともいえようか。
だから、なのか(他にも理由があろうが)
閉店していった店も、少なからずある。
趣味的な感じ?。
そんな気もする。
ただこの[がんこ]の趣味的な感じは、好ましい。
好ましくさせているのは[がんこ]のもう一つの特徴、
“寡黙で柔和”な感じからくるもののような気がする。
[がんこ]を語りつくしていないのように思うが、
やはり、現代において、希少なラーメンやであろう。
東京都豊島区東池袋1-13-12