浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



初芝居 その1

dancyotei2010-01-04

1月3日(日)


仕事始めは、4日。
これは、毎年かわっていないと思う。


今日、三日は、歌舞伎座初芝居へ。


昨年の正月は、新橋演舞場海老蔵獅童
白波五人男を観た。


今年も、と、思い、暮れに、歌舞伎座の演目から見てみると
昼が勧進帳、夜が、菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)
京鹿子娘道成寺(きょうかのこむすめどうじょうじ)、
与話情浮名横櫛(よわなさけうきなよこぐし)。
勧進帳は昨年、始めて観た。


夜の三つは、どれも観たことがない。
またこれらは、素人の私がみても、有名かつ、人気、
定番の演目であることくらいは、わかった。


観ておこうと、決め、一階の一等を取っておいた。


寄席は元日から開いているが、歌舞伎は、二日が初日で、
今日が二日目、で、ある。


4時40分開演。


3時半頃、私は着物を着て、内儀(かみ)さんと出る。
着物は初詣に着たものと同じ、なのだが、
下は、長い股引ではなく、七分の長さのものにした。


銀座線の稲荷町から乗って、銀座で降りる。
正月の銀座はにぎわっている。


銀座は外人、東洋、西洋両方からとみえる、
観光客の姿も多く見かける。


昨日は、浅草松屋に買い物があり、出かけたのだが、
浅草は初詣の人であろう、ごった返していた。
しかし、こちらは外人はさほど目に付かなかった。


むろん、浅草にも外人観光客はいなくはないのだろうが、
やはり、日本人の初詣の人々の方が割合とすれば、多いのだろう。


それにしても、外人観光客が正月の銀座にも
多いことは、あまり気が付いていなかった。
最近の傾向であろうか。


昭和通りを渡って、さらに、晴海通りを渡り、反対側へ。





今回も、辨松の弁当を買って入ろうときてみたが、休み。
角の、大阪寿司の日乃出で買う。


再び、歌舞伎座前に戻る。
既に昼の部は終わっており、クレジットカードで
予約しておいた、切符を引き上げ、入る。


席はちょうど一階のまん真ん中。


ビールを買って、席で呑みながら開演を待つ。


夜の部の演目と主な配役を書き出しておく。



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一、春の寿(はるのことぶき)



  梅 玉


  福 助


  雀右衛門



二、菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)


  車引


        桜丸  芝 翫


       梅王丸  吉右衛門


       杉王丸  錦之助


     金棒引藤内  錦 吾


       松王丸  幸四郎


      藤原時平  富十郎



三、京鹿子娘道成寺(きょうかのこむすめどうじょうじ)


  道行より押戻しまで


      


     白拍子花子  勘三郎               


        所化  高麗蔵


    大館左馬五郎  團十郎



四、与話情浮名横櫛(よわなさけうきなよこぐし)


  木更津海岸見染の場


  源氏店妾宅の場



    切られ与三郎  染五郎


        お富  福 助


     鳶頭金五郎  錦之助


      番頭藤八  錦 吾


       蝙蝠安  彌十郎


   和泉屋多左衛門  歌 六



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一幕目、これは、舞踊。
それも創作もの、のよう。15分ほど。
雀右衛門は病気休演。代わりは誰か?場内アナウンスを
聞き落してしまった、、。雀右衛門は89歳とご高齢。
歌舞伎界の立女形(たておやま)、とのこと。)


二幕目、菅原伝授手習鑑、車引。


はっきりいって、これ、私、まったく、
知識がなかった。


松王丸、梅王丸、桜丸の三つ子の話。
むろん、昔は、みんなが知っている、常識以前の
ものだったのだろう。


落語にも、ほんのちょっとした、くすぐりという形でも
よく登場していたが、この部分は思考停止。


これを機に、ちゃんと理解しておこう。


背景など、少し、書いてみたい。
(ご存知の方は、読み飛ばしを。)


菅原、と、いうくらいで、菅原道真にまつわる話。
作者は竹田出雲ら、初演は上方で、延享3年(1746年)
人形浄瑠璃から。
(時代とすれば、吉宗の頃)


翌年、すぐに江戸で歌舞伎でも演じられ、大当たりをとった。
(松王丸が、江戸では四代目團十郎
ルーツは、上方かつ、人形浄瑠璃で、まあ、それらしい、
というところ。


菅原道真は天神様。
平安時代藤原氏との権力争いに敗れ、
九州の太宰府に左遷された、と、いうのが
日本史で習うこと。
あるいは、


東風吹かば匂ひおこせよ梅の花 あるじなしとて春なわすれそ


の歌でも有名な、飛梅伝説周辺のこと。


道真は左遷され、失意のまま大宰府で没した。
その後、都では、異変が続発し、これを道真の祟りとして、
北野天満宮として、まつったのが、天神様、天神信仰の始り。


このへんまでは、私でも知っている。


これら史実と民間伝承を背景に、大坂で当時
生まれた三つ子が話題になっていた、ことを加えて、
菅原道真とライバル藤原時平、そして、三つ子の
兄弟、という話が作られた。
(日本史では、藤原時平は、トキヒラ、だが、歌舞伎では
シヘイ、と読んでいる。)


全段を通したあらすじ、らしきもの。


三つ子の長男、松王丸が時平の舎人(家来)。
次男の梅王丸は菅原道真(菅丞相)、三男の桜丸は
斉世親王(時の帝の弟)の舎人と、兄弟であるが、
別々の主に仕える。


もともとは、初段から五段目までの五部構成。


歌舞伎では、四段目の、寺子屋の場などが、主に演じられる。


物語の基本は、菅丞相と時平との権力争い、
配流、天神となる。
これにそれぞれの家来になった、三人、それから、
菅原家の再興を目指す、菅丞相の息子、秀才あたりを
からめた、話。


三つ子は、松竹梅、ではなく、松、梅、桜。


なぜ、松、梅、桜か。
これは、道真にまつわる三つの伝説から名付けられている
ということ。


梅は、先の飛梅
松は、追(い)松、伝説。
桜は、枯れ桜。


梅は飛び桜は枯るる世の中に何とて松のつれなかるらん


という歌もある。
(これなども、確か、圓生師匠の、掛け取り、あたりに
出てきたと思われる。)



と、まあ、ざっとそんな感じのよう。



なのだが、最初の、ちゃんと理解しておこうという
私の意志は、結局、挫折してしまった。
簡単にネットを調べてくらいでは、やっぱり、
なんのことやら、この話、わからない、のである。


(そもそも、この三人がなぜそれぞれ別の主に仕えたのか、
これからして、わからない。ヘンであろう、、。)


一度、原典にあたることを私の宿題にさせていただきたい。



で、今日の車引は、三段目から。



主を失った、梅王と桜丸が、時平の牛車を襲うと、
いう場面。
松王が二人を諌め、さらに時平が現れ、睨みつけて二人は
すくみ上がり、幕。


この場の主人公は、梅王、であろう。
これを吉右衛門
松王は、幸四郎
桜丸は、芝翫


梅王が隈取りも、最も、派手。
いかにも、歌舞伎のヒーローらしい、荒っぽい感じで、
いわゆる、荒事(あらごと)。
松王は、二人を抑える、常識人(歌舞伎では実事、というらしい)。
梅王丸は、柔らかい和事(わごと)、で、それぞれ三つの様式美を凝縮した様々な
見得を切るなど、形、をする。


こうした説明を読んでから、観ても、なぁ〜んとなく、
そうかな、といった程度の理解。
(三人の衣装やら、梅王の飛び六方やら、
見てわかるものは、むろんたのしめたのだが。)


正直むずかしかった、、。



お好きな方からすれば、笑止、で、あろうが、
これほど、よく知られた人気の演目、で、ありながら、
やっぱり今の素人には、わかりにくい。
歌舞伎の、奥深さ、、、。




と、なんとなく、消化不良だが、今日はここまで。
明日もつづく。